1. 経営者の役割と外部監査人の役割
内部統制監査は、原則として、同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって行われることとなっており、いずれの監査においても二重責任の原則に沿って実施されることとなります。
二重責任の原則とは、財務諸表に関連する役割や責任について、経営者と外部監査人との間でどのように分担するのかを定めた責任分担の原則となります。すなわち財務諸表監査において、財務諸表の作成責任は経営者にあり、外部監査人は経営者の作成した財務諸表に対する意見を表明する責任を負うこととなります。
この二重責任の原則は財務諸表監査に限らず内部統制監査についても同様に求められ、内部統制報告書の作成責任は経営者にあり、外部監査人は経営者の作成した内部統制報告書に対する意見を表明する責任を負うこととなります。
もし、内部統制監査について二重責任の原則がない場合には、内部統制報告書に対する経営者との責任分担について、ステークホルダーが適切に理解できないことになります。その結果、経営者が内部統制報告書の作成責任を果たさないという問題が生じる恐れがあります。また、経営者と外部監査人との責任分担が不明瞭となった結果、外部監査人が内部統制報告書を作成した上で自ら監査(自己監査)をしているのではないかとの疑念をステークホルダーが抱くこととなり、内部統制監査制度そのものに対する信頼が著しく低下する恐れがあります。
つまり、内部統制監査の実効性を担保するためには、二重責任の原則は必須の大前提と言えます。そのため、外部監査人の内部統制監査は、あくまで経営者の作成した内部統制報告書を監査するものであり、内部統制の構築や運用・監視を実施するような業務を行ってはならないとされています。
2. 経営者評価における外部専門家の活用
経営者は、内部統制を整備及び運用する役割を有しており、特に財務報告の信頼性を確保するために、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、その有効性を評価し、その結果を外部に報告することが求められています。この有効性の評価に当たっては、専門的な知識や経験に基づく判断が必要となる場面が多いことから、企業においては外部専門家によるサポートを検討することもあります。
外部専門家の提供する財務報告に係る内部統制関連業務の代表的な例としては、次のような業務が挙げられます。
① プロジェクトの構成員になり、プロジェクトの運営管理支援を行うこと。
② 全社的な内部統制及び業務プロセスに係る内部統制の有効性の評価の支援を行うこと。
③ 内部統制の評価範囲に係る意思決定の支援を行うこと。
④ 内部統制に関する報告書作成の支援を行うこと。
⑤ 内部統制に関する報告書の作成において、発見された内部統制の不備に関して、重要な欠陥かどうかの意思決定の支援を行うこと。
⑥ 内部統制の運用状況を確かめるためのテストを支援すること。
これらの業務については、二重責任の原則や独立性の観点から外部監査人は行うことができないため、外部専門家の提供する業務となりますが、これらはあくまで各企業が必要と認めた場合にのみ実施するものであり、各企業が自社で対応できる場合には発生しない業務となります。