国内外の拠点・法人にファイナンス部門を配置することにより、それを機能させるためのポジションとポジションを埋めるための人材配置ニーズが発生します。人材確保が困難な状況下では、まずは、これらの組織機能の集約化(シェアードサービス化)と外注化(アウトソーシング化)により、より少ない人数での組織運営が可能な状態へと目指す必要があります。すでに集約化と外注化を図っている場合も、定型・ルーティン業務を対象としている場合が多く、高度・専門的業務である単体決算や税務、資金管理、管理会計等の業務・機能は各拠点・法人に配置されたままとなっているケースが多いため「本当に拠点・法人にロケーションとして配置する意味があるもの」以外は徹底して集約化と外注化を図る必要があります。また海外に目を向けると、定型・ルーティン業務の集約化も不十分な場合があり、同様に徹底した集約化・外注化を行う必要があります。
一方、親会社で実施している連結決算やグローバル税務・資金管理、グループ経営管理といった機能は本当に親会社=日本で実施(配置)する必要があるのかについて、再考の余地があります。これらの業務に必要な知識と経験を有する人材は海外にも多くおり、必ずしも親会社に配置し日本人社員が担う必要はないはずです。
さらに、高度・専門的業務を担う要員は自社人材が担っているのが現状ですが、会計士や税理士またはコンサルタントといった専門組織へ外注化、または専門家の人材派遣で不足分を賄うといった手法も選択肢として考えるべきです。この手法は単に不足要員の穴埋めだけでなく専門家が持つ知見を活かした業務効率化や新制度対応といった成果発揮も期待できます。近年はこのような高度・専門的業務の外部リソース活用手段も多様化していることから、これらを活用して社内人材登用が必要なポジション自体を削減することが期待できます。
ここまでは、機能を集約しポジションを削減する施策を述べてきましたが、ポジションの削減という意味では不十分です。さらなる削減を目指すにはグローバルでルール・業務プロセスの標準化が必須となります。「業務標準化」を実際に徹底できている企業は少なく、改善余地が多くあります。システム統一を図る企業でもシステム上で行う業務のルールやシステム外で行う業務の標準化が図れていないことが散見されます。昨今はERPでカバーしない業務を支援するサービス・システムも登場し、これらを活用することでさらなる標準化が推進され、各社または集約組織のスリム化を図ることが可能となります。また、昨今のコロナ禍でのリモートワーク浸透でも分かるように、複数拠点に配置された機能・業務に対し各拠点に人材を配置せずとも遠隔地から業務遂行することも可能になりました。つまり「本当に拠点に残す必要がある業務」であっても遠隔で複数拠点を担当することが可能であり、さらなるポジション削減も可能です。