まず相対的に売上相関性の低いシンプルカテゴリーからZBBを導入することを推奨します。
シンプルカテゴリーの典型例として、旅費交通費や会議費などが挙げられます。このような科目は、活動を単価×回数(数量)などに分解することが比較的容易です。
また、例えば、旅費交通費であれば、移動手段などに関連した単価の無駄遣いなどを客観的に比較・分析し是正しやすいため、具体的な見積もり方法や粒度を部門間で統一することが実現しやすいといった特徴があります。
次に、導入影響を把握した上で、コンプレックスカテゴリーへのZBB範囲拡大をチャレンジし、売上減少につながらないように留意します。
コンプレックスカテゴリーの典型例として、広告宣伝費や研究開発費などが挙げられます。
このような科目は短期的な財務数値目標の達成に向けて安易に削減するのではなく、企業がさらに長期的な視点で持続的に成長を遂げるために同業他社のベンチマークや経営目標などを十分に考慮して策定する必要があります。
長期的な視点を持たずにZBBを適用することにより、将来を見据えたブランド構築活動、複数年に跨るキャンペーン、さらに中長期での研究開発が脅かされるリスクを予防することが重要と考えます。
3. 部門を跨いで予算統制を行うことは現実的か
ZBBの特徴であるコストカテゴリーオーナーは、担当するコストカテゴリーにおける各施策について、部門横断での予算の検証・見直しや、支出のモニタリングコントロール、新たなコスト削減の機会の発見とアクションプランの検証などを担います。
規定への準拠性の確認をしたり、期中の操業度(売上推移)やコスト費消状況などを見たりしながら、必要に応じて予算の優先度の見直しや費消状況の改善に向けた指摘・助言を行うことも役割です。
これにより、理想的な予算管理のPDCAサイクルを生み出すだけではなく、各部署間での健全な緊張関係を保つことが期待できます。
コストカテゴリーオーナー制度を有効にするためには、強力なリーダーシップとオーナーシップが必要となるため、実効性の観点からトップマネジメントの強力な推進が重要となります。
コストカテゴリーオーナーには役員層をアサインし、適切な範囲で結果責任を持たせた上で、役員管掌内での各部門を比較する運用を行うことが有効です。
4. マスターデータの粒度を揃えて実施する基盤を備えているか
各社/各事業部での予算データ、マスターの持ち方などが揃っていないと、横串での比較ができないといった弊害があります。
例えば、部門ごとに勘定科目、発生部門、コストの損益項目・区分(原価/販管費など)などが曖昧なまま予算設定されたり、実績と予算でデータの平仄(ひょうそく)が合っていないなどが起きていないでしょうか。
このような場合、同一条件での部門間比較や予実比較が行えず、予算執行における統制が効きづらくなってしまいます。
ZBBの導入に当たっては、まずは、既存システムのマスターデータの中で、可視性/分析性が保たれた対応可能な範囲から部分導入を進め、発見した課題を解消しながら、将来的にデータ整備や管理方法の見直しにつなげていくアプローチが有効です。