1. 情報基盤の整備
バリューチェーン全体を通じて製品ライフサイクル損益を把握し、意思決定の各タイミングで情報提供できる仕組みとして情報基盤の構築が重要です。
製品ライフサイクルは業種・業態によって長短は異なりますが、計画された販売数量がバリューチェーンのいたるところで事業変化の煽(あお)りを受けて変動します。絶えずアクションを打ち続け、損益獲得に邁(まい)進しようと志すのはどの業種・業態であっても変わりません。アクションを打ち出すために提供される情報が、常に企画から生産、販売、そしてアフターサービスまでのバリューチェーン全体通じた活動結果を包含していることで、機能を超えて企業全体で損益を獲得するための会話を生み出し、適切な経営判断を促すことになります。
2. 責任主体の明確化
各組織機能の個別最適された判断ではなく製品単位や製品群において損益の最大化を図るためには、バリューチェーン全体を軸とした損益管理を行うことを役割とする製品損益責任者が必要です。最近の日本企業においても、プロダクトマネジャー、カテゴリーマネジャー、ブランドマネジャーなど名前は違えどもVCFの効果を期待して製品損益責任者を設置している企業が増えてきています。製品損益責任者は機能による縦割りではなく、製品のバリューチェーン上において、ゆりかごから墓場までの損益責任を負うことで、事業変化の不確実性に対応するVCFによる意思決定のサポート役となります。
また、事業レベル、製品横断レベルでVCFを管理するコントローラーの存在は製品損益責任者と相まって事業の損益最大化に貢献します。
3. 意識改革
バリューチェーン上で製品ライフサイクル損益を可視化し全社で共有することにより、共通意識の醸成と全体最適の意思決定、すなわち損益の最大化が図れます。しかし、日本の企業においては機能別縦割組織の色が強く、個々の部門での目標達成に重きが置かれ、損益を最大化できていない傾向があります。それを打破するのはハードルが高いのが現状ですが、その壁を打ち破るべく、企業全体での意識改革、特にトップのコミットメントによりVCFを推進していくことが成功要因となります。