独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発表した2021年上半期のコンピュータウイルス・不正アクセスの届け出事例によると、「身代金を要求するサイバー攻撃」、「IDとパスワードによる認証突破」や「脆弱(ぜいじゃく)性をついた不正アクセス」が依然として多く報告されています(<表1>参照)。一方、「コンピュータウイルスの検知・感染被害」は減少傾向にあります。これは、昨年猛威を振るった「Emotet」と呼ばれるコンピュータウイルスの攻撃基盤が停止された効果と考えられていますが、怪しいメールの添付ファイルを安易にクリックしないといった啓蒙や、パッチ適用の自動化といった企業の地道な努力も徐々に効果を上げていると考えてもよいでしょう。
ウイルス感染が減少傾向であることは望ましいことですが、サイバー攻撃の被害としては、より実害の大きい攻撃の報告が増えているという見方をすべきです。身代金要求といっても、ウイルスの一種であるランサムウェアに感染させてデータを暗号化し、復号のための鍵が欲しければ身代金を払えと脅迫するような攻撃だけではありません。企業ネットワークに侵入後、顧客情報など企業にとって外部に漏らしてはならない機密情報を詐取し、身代金の支払いに応じなければ外部に公開するといった脅迫や、ウェブサイトをマヒさせる攻撃を仕掛けておき、身代金を支払わないと再度攻撃すると脅すようなものまで含め、二重三重の脅迫を行う攻撃も実際に起きています。
企業はこのようなサイバー攻撃によるセキュリティインシデントを一刻も早く検知し、迅速に対応する必要に迫られています。