先端テクノロジーと保険の掛け算で新ビジネスをサポート
― デジタル化の進展とも強いつながりがありそうですね。
はい。テクノロジーの進化も、保険業界を取り巻く大きな変化の1つです。金融とテクノロジーの組み合わせをFinTech(フィンテック)と呼びますが、特に保険業界では保険(インシュアランス)×テクノロジーのInsurTech(インシュアテック)が台頭しています。AIやIoT、ビッグデータ活用といった先端技術を活用して、新しいサービスやビジネスモデルを創り出そうというわけです。
データ分析に基づくダイナミック・プライシングや個人の健康データを活用するパーソナライズされた商品の提供などもテクノロジーの進化があってこそ提供できるようになってきたものです。
そうなると、異業種からの参入もまたいっそう進む可能性があります。個人の購買データなどを大量に抱える巨大なプラットフォーマーが、遠くない将来、金融業や保険の世界にも本格的に進出するかもしれません。保険会社は、IT企業やX-Tech(クロステック)を得意とする企業、あるいは医療や健康などQOL関連企業との幅広い連携を視野に入れて、ビジネスをしていくことになるでしょう。
大手の保険会社は歴史も古く、システムにしても人にしても莫大な資産を抱えているため、そのままでは変化のスピードに乗り遅れないとも限りません。これまでの重厚長大なシステムや、人の働き方についても大胆に見直す時期に来たのだと思います。
― その中で、コンサルタントはどのような役割を果たすのでしょうか。
将来を一緒に考え、共に走る伴走者でありたいと思っています。ビジネスの最前線に立つお客さまの現場力と専門知識、私たちの情報網や専門スキルに基づくデータや事例、これらを互いに持ち寄り、今後に向けた検討を重ねています。コンサルタントならではの客観性とお客さまの現場感覚の相互作用によって、どちらか片方だけでは見つけられないものを見つけられることもあると思っています。
同じ価値観と思いを共有し、互いに刺激し合いながら一体となってプランを実現するパートナー。そうした関係性を築くことが、コンサルタントに求められていると思います。
チームの力で保険と社会の次代を開くEYの役割
― 1人のコンサルタントとして、保険業界の発展にどのように貢献していかれますか。
私はIT企業の出身ということもあり、コンサルティング業界に移ってからもITを活用する案件を中心に担当してきました。1つ例を挙げると、数年前になりますが、RPA(Robotic Process Automation)を生命保険会社に展開するプロジェクトを担当させていただいたことがあります。RPAとは、人間が行う日常的な作業を代行する自動化技術、いわゆるロボティクスで、業務効率化の必要性からさまざまな業界で急速に普及が進んでいます。
今でこそRPAを導入する企業は珍しくありませんが、その保険会社で検討を始めた当初はRPAの用語すらまだ世間には認知されていない状況でした。PoC(概念実証)から始め、RPAによる単なる業務自動化だけではなく、今後の業務改善やコスト削減、人材活用の構想を実現するための組織づくり、標準化、育成施策など、お客さまやプロジェクトメンバーと一緒に幅広いトピックに手探りで1年以上かけて取り組んだだけに、苦労はあったものの達成感は大きく、お客さまにも喜んでいただけたことを覚えています。今もそのプロジェクトはさらなる発展を続けており、働き方改革にもつながっているなどのお話も伺っています。変化のきっかけに立ち会うことができたことを非常にうれしく思っています。
保険業界におけるIT活用には、AIやデータなどを活用して顧客ニーズの変化に対応しマーケットを拡大する「攻め」の施策と、業務効率化やコスト削減、リスク管理などの「守り」の施策があります。これらに伴う戦略や計画の策定、組織設計、人材活用など、施策に関わる全てがコンサルタントの仕事につながり、保険業界の発展にもつながっていくと思っています。
私自身は今、サイバーセキュリティの案件に関与していますが、コスト削減施策などとは異なる費用対効果などの成果の表し方に難しさを感じています。でもお客さまとのそんな話し合いも、面白みの1つ。顧客企業や業界にまだ根付いていない、これからの可能性がある技術やサービスを、人とのつながりなどのさまざまなアンテナを通じて見いだし、一緒に考える。この仕事の醍醐味だと思います。
― どのような人と一緒に働きたいですか。
コンサルティングファームが面白いなと思うのは、いろいろな業界や専門領域から人が集まっていて、1人ではなくチームで仕事をするところ。バックグラウンドも得意分野もばらばらな人たちが、それぞれ何かを持ち寄って1つのものを作り上げていく。そうした環境を楽しみ、もっといいものを作ろうと前向きに取り組める人と、これからも一緒に働いていきたいです。
保険業界は変革の時代を迎えていますが、生きていく上でのリスクに備えたいという人々の根本的なニーズはこの先も変わらないと思っています。保険会社としてそれにどう応えていくか。今後取り組むべきテーマがたくさんあるので、新しいことに積極的にチャレンジしてみたい方とご一緒できるといいですね。
参考リンク:
一般社団法人生命保険協会「生命保険の動向(2021年版)」、seiho.or.jp/data/statistics/trend/pdf/all_2021.pdf(2022年6月13日アクセス)
公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2021年12月発行)」、jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html(2022年6月13日アクセス)
サマリー
保険業界におけるIT活用には、AIやデータなどを活用して顧客ニーズの変化に対応しマーケットを拡大する「攻め」の施策と、業務効率化やコスト削減、リスク管理などの「守り」の施策があります。これらに伴う戦略や計画の策定、組織設計、人材活用など、施策に関わる全てがコンサルタントの仕事につながり、保険業界の発展にもつながっていきます。