本格的なスタートラインに立った日本のSDGs
牛島 現在、日本ではSDGsが大変な盛り上がりを見せています。国レベルでは内閣府をはじめとする関係省庁、関係機関が積極的に取組みを行っており、これを受けて民間でも多くのキャンペーンが展開されており、さまざまな場面でSDGsバッジを着けている方をよく見かけるようになりました。SDGsを推進する立場の蟹江先生は、今の日本の状況をどのようにご覧になっていらっしゃいますか。
蟹江 ここまで盛り上がった理由の一つは、2017年に経団連の企業行動憲章が改定されて「Society5.0の実現を通じたSDGsの達成」が掲げられ、経済界が一気に動き始めたことにあると思います。これにより、SDGsの認知度が大きく向上しました。とはいえ、実質的なアクションを起こしている企業はまだ多くはありませんので、日本のSDGsはいよいよ本格的なスタート地点に立った段階だと見ています。
牛島 欧米諸国と比べた場合、どの程度の位置付けになるのでしょうか。日本では報道も多く行われていますし、統合報告書やアニュアルレポートでSDGsに言及している企業も多いのですが、海外メディアではあまり取り上げられていないように感じます。この違いは何なのでしょう。日本と海外では、SDGsの考え方や取り組み方に何か違いがあるのですか。
蟹江 確かに、米国でSDGsに関するニュースはほとんど聞きません。話題になったのは、昨年9月に韓国の音楽グループのBTS(防弾少年団)が、国連でスピーチをしたときくらいです。とはいえ、サステナビリティという言葉はよく耳にします。アメリカ人は国連にあまりシンパシーを感じていないという社会的背景があって、SDGsよりも分かりやすいサステナビリティという言葉を使うのです。さすがに、国連のお膝元のニューヨークは事情が異なるようですが。一方、欧州では、エリート層と話をすると、しばしばSDGsという言葉が出てきます。ですから、使う言葉に相違はあれど、世界的に持続可能な社会への関心が高まっていることは確かです。