最近行われた2018年度第3四半期 の決算報告から明らかなように、Advanced Manufacturing(AM)業界の経営トップたちは、楽観的な成長見通しを持っています。原材料価格の高騰が逆風となるなか、経営トップたちは貿易戦争や新たな関税、より広範な地政学的環境を注意深く見守っています。その一方で、あらゆるサブセクターの経営トップが最も急成長している地域としてアジア太平洋を挙げ、この地域に可能性を見いだしているほか、欧州とラテンアメリカでの売上高も上昇しています。
この記事では、Advanced Manufacturing業界の上場企業20社による2018年度第3四半期決算報告から、私たちが選んだ注目の上位10テーマをご紹介します。
1. 運転資本およびキャッシュフロー管理:改善の兆し
生産性プログラムやコスト管理プログラムなどを通じ、運転資本の引き締めを最優先にした結果、各社のキャッシュフローは改善が続いています。一部の企業では、年金拠出額の増加がキャッシュフローの足を引っ張っています。また、数社が顧客需要に対応するため在庫水準を引き上げました。
一方、 化学品および工業品製造企業の経営トップたちは、「高い在庫水準は予想外であり、運転資本管理にとって課題だ」と指摘しています。
2. 地政学的環境:貿易政策に対する懸念
貿易政策 の衝突と新たな関税の進展が、工業市場に継続的な不確実性をもたらしています。一部の経営トップは、金利が上昇した場合に最終市場、特に自動車市場で需要が減少するなど、二次的影響が生じることを懸念しています。各社の対応としては、グローバル製造拠点の活用を通じた関税リスクの低減、主要原材料にかかる関税の免税申請、それに価格引き上げなどが挙げられました。
航空宇宙・防衛(A&D)企業の 一部は、米国の2019会計年度の新国防予算について、軍事支出の増大を支持するものになる可能性が高いと楽観視しています。その一方で、米国のA&D企業の中には、米国とサウジアラビアの間で高まる緊張が主要な最終市場に対する制約になりかねないと見る向きもあります。
3. 競争環境:コスト上昇が課題に
全ての サブセクターの企業が、原材料コストの高騰と関税の影響に対応するために価格を引き上げています。革新的な技術を駆使した高級製品は、価格を引き上げても市場シェアを維持する上で最も有利な状況にあります。製造コストの上昇を受け、生産性向上の取り組みを刷新した企業もあります。
提供する サービスの幅を広げ、購入後のメンテナンス契約や事業コンサルティングなどに乗り出した企業は、顧客関係の深化や将来的な収入源の確保につながる手段を得ています。また、ある工業品製造企業は、経済的不確実性などの影響で、顧客が大規模プロジェクトへの投資に慎重になっていると報告しています。
4. 地域的動向:楽観の根拠
あらゆる サブセクターの経営トップが、引き続きアジア太平洋を最も急成長している地域に挙げています。相変わらず多くの製品で中国が需要の伸びをけん引しています。ただし、特に中国の自動車セクターと太陽光発電で成長が鈍化していると数社が指摘しています。
一部の企業 では、2018年度第2四半期から続く傾向として、欧州とラテンアメリカでの売上高が増加しています。研究開発投資は、中国、中東、欧州を中心とする特定地域の市場で、現地顧客のニーズに対応するために行われています。
5. 最終市場の動向:幅広い需要の拡大
工業市場全体で 、成長に裏打ちされた楽観が見られます。航空交通量の堅調な増加と高い搭乗率が、引き続き民間航空機の需要を押し上げています。多くの国で防衛予算が拡大するなか、軍用機器に対する需要が増加を続けています。先端材料や特殊化学品に対しては、コンシューマーエレクトロニクス、農業、食品製造業の顧客からの需要が高まっています。
一部の市場で自動車業界の顧客からの需要が減速しているものの、電気自動車には成長が見られると複数の企業が報告しています。建設資材については、複数の企業が「軟調」と指摘しました。エネルギーセクターでは、従来型の発電業界の顧客に比べ、再生可能エネルギー業界の顧客からの受注がより急速に伸びています。